今村恭子 「月族」



月、天野喜孝さん、古代の民。末裔。

風間の大好物がそろった
ちょっとでも触ったら こわれてしまいそうな ガラスのような作品。

最初は 天野さんのイラストに惹かれて 手に取りましたが
読んでみて すぐに 物語に 引き込まれました。

今村恭子さんの 独特な 行間の雰囲気に。

主人公の大学生:薬子(くすこ)は
これまで 男の人を好きになったことが ありません。
好き という感覚も いまいち よく分かりません。

そんな 薬子は、いつでも月に見守られ、寄り添われてきました。

ある日、病気で外に出られない青年:飛鳥の “話を聞く”
という アルバイトをすることになります。

飛鳥によりますと、薬子は 『月族』 だと言うんです。
覚醒しているか していないかに関わらず
月族には 月族が 分かるんです。

そして 飛鳥は 月族における「アダムとイブ」のような存在
月族の始祖:プラリネ の物語を 語りはじめます。

プラリネも 薬子と同じく 愛する、という感覚が分からない少女でした。

このプラリネの 哀しい物語と
薬子の 現実世界での生活とが 交互に描かれていて、
とっても幻想的なのに ちょっとお茶目で 引き込まれます。

太陽よりも 月が好き。
むしろ 月の視線を感じたり、月にお願いごとをしてみたり。
そして、 愛について、真剣に考え 悩んだことがある。

そんな方は ぜひ読んでみてください。

月明かりのように 冴え冴えとしていて、
でも 温かみがあって
ガラスのように 触れたら割れてしまいそうな 美しい物語です。




ちなみに 古代月族としては
一巻目が 月族の始祖:プラリネ、北人の英雄:シーラ
二巻目が この二人の息子:ルーン、教育係:シュラ
三巻目が 月の民の末裔:トマ、寝たきりの青年:ギイ
彼らの それぞれの愛 が 描かれています。


意志は めぐり
逞しく、支えあい、戦って、新しい時代へと受け継がれ受け継ぎ。

『わたしは、あらゆる愛のために、今この瞬間を生きなければならない、
 と思った。』
(3巻 271ページより抜粋)





「LaiLai 夏の36冊」で紹介した本をすべて読むと
風間の人格形成過程が 理解できるくらい
大切な本ばかりを セレクトしました。
毎日 好きな本を紹介できて 楽しかったです。

本棚には 紹介しきれなかった作品が たくさんあるので
また 紹介できればと 思ってます。

皆さんの 生涯の1冊 になったらいいな、という本ばかりなので
よかったら 紹介した作品、手にとってみてください。
2013年08月29日 14:08 カテゴリ:夏の36冊
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