京極夏彦 「ルー=ガルー 忌避すべき狼」

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分厚いです。
582ページ。しかも 文章が2段になってます。

京極夏彦さん=ホラー、妖怪、お化け
というイメージが強かったんですが
この物語は SFに近いんです。

手に取ったきっかけは 確か 帯の一言。
「人を殺してもいいのだろうか?」

そして “ルー=ガルー” という題名。

何かと思ったら フランス語で
夜間 狼に化けてさまよい 悪事を働く伝説上の怪物

なんですって。

当時 狼にも はまっていた 風間。
(ドラキュラ → こうもり → 狼男 → 人狼…
 ここから 小野不由美 「屍鬼」にも つながっていきます)
ちょっと迷いましたが 手にとって読んで納得。
手に取らなかったら 後悔していたはず。



物語の舞台である2030年は、
清潔で無機的な徹底した管理社会になっていて。
少女たちは携帯端末で すべての行動が把握されています。
つまり 少女たちにとって 世界=モニターの中。

そんな 現実感が希薄な都市で 連続殺人事件が起こります。
被害者は14歳・15歳の少女ばかり。

同級生が事件の鍵を握るらしいと気が付いた
他人と接触するのが苦手な葉月、
少年のような少女:歩未、
天才少女:美緒は 事件を追っていくうちに
巨大な敵に 気が付きます…


『直接的なコミュニケーションが苦手な若者が増えている』
そんなニュースを 見たり 聞いたり しますよね。
電話できない、とか、目を見ることができない、とか。

感情表現の方法も分からなくて
子供のようになってしまったり
想像力が乏しいが故に
社会的に問題がある行動を取ってしまったり。

そんな問題が現時点で発生しているのに
この小説の舞台である2030年になったら どうなってしまうのか
すごく 怖くなる物語でもあります。

そして ある意味 純粋培養な少女たちに対して
敵 (大人たち) の 気味の悪さ。
思い込みの強さから来る 根拠のない 自信・正義。

やっぱり 14〜15歳の頃が
一番 一生懸命で純粋だな、と 改めて感じました。
(風間の秘密。語弊がちょっとありますが
 社会人になるまで、精神年齢 14歳、と
 ずっと思ってました。)

誰がルールを作ったのか。
どうして ルールを守るのか。
どうやって 他人と関わっていくのか。
どうして 関わらないといけないのか。

そんなことを 取りとめもなく 考えつつ
思い浮かんだのは
「ドラえもん のび太とブリキの迷宮」という映画。

ドラえもん映画の中でも1番好きな作品で、
特に印象に残っているのは
“カプセルに入らなければ動けない人間” と
“社会が ロボット化” していること。

利便性・合理性を追い求めすぎると
機械を使う のではなく
機械に使われてしまう、という危機感。

そして 便利な世界だからこそ
前時代的なモノに固執する 感覚。

そういったゴチャゴチャしたものをひっくるめて
“狼”というワードが すごく印象的です。

ミステリー色も強く
独特な世界観も魅力的ではあります。
1ページ目から 引き込まれること 間違いなし!
ですので ぜひ 読んでみてください。
2013年08月27日 13:41 カテゴリ:夏の36冊
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