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なつやすみのおもいで

さくぶん:ひらかわあゆみ


雷が鳴ると祖母は毎回
「畳の部屋に行きなさい」と言っていた。
なぜそこが安全なのかは分からないけど、
祖母が言うなら間違いないと信じていた。

弟と、稲妻の閃光に怯えながら
ゴロっと音が鳴るまでの数を数え、
「遠い」だの「近い」だの話していた。


夏休みの思い出は、
私にとってイコール祖母だ。


父方の祖母は一緒に住んでいて、
さっきの雷の達人(笑)。


そして、母方の祖母は唐津にいる。
市内からは遠く、
みかん畑が広がる山の中に
その人は住んでいる。



子供の頃、
車で或いは電車に乗って祖母の家に
行けるのが嬉しくて仕方なかった。
「この後唐津に行く」という土曜の半ドンなんて、
スキップして帰ってたくらい。

同じ佐賀なのに、
所変われば景色も方言も違うわけで、
子供心に旅気分を感じていたのだと思う。


そうそう、
祖母の話す方言はいまだに分からない(笑)

久留米弁に近い私とは語尾もイントネーションも
全く違う。

でもいいのだ。

祖母はいつもニコニコとしているから
きっと優しいことを話しいるに違いない。


私達姉弟を出迎えると祖母は、何時でもこう聞く。

「お腹空いてないね?」

「疲れてないね?」

何十年と変わらない優しい笑顔と言葉だ。


そうして、夏のために蚊帳をつるし、
冬は暖を作ってくれる。


海だ、滝だ、山で海賊ごっこだ!
一日遊んで日焼けした夏休み。


祖母は、汗だくの私達を風呂に入れ、
蒔きを焚き、風呂を沸かしてくれた。

「ばぁちゃんも入れば?そこ熱いでしょ」

と言うと、

「うんうん、でもあんた達が先でよかと」


祖母だって一日山で仕事をしたのに。
今だって火の前で汗だくなのに。

いつだって私達のこと優先で。


そうして育ったから、
夏休みの匂いは祖母の匂いだ。


ここ数年、この祖母の体調が少し悪い。
記憶も曖昧になってきていると聞いた。
あんなに丈夫な人だったのに。

この夏、祖母に会いにいこう。
子供の頃の話を沢山しよう。


「お腹空いてないね?」

「疲れてないね?」


何十年と変わらないその言葉が
今でも大好きだよって伝えよう。

2014年08月06日 06:00 カテゴリ:Ayumi voxxx
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