池宮彰一郎 「島津奔る」

今日(8/21)は “別冊 LaiLai 夏の36冊” ということで
SunriseStation の 甲斐田貴之さんに
オススメの本を教えていただきました。

1998年に出版されたものの
司馬遼太郎 「関ヶ原」に似ているという 批判を受け
作者である 池宮彰一郎さん自身が 2003年に絶版にした という作品。

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現在 古本屋さんなどでしか 手に入らないのが
もったいない 名作!!


薩摩の太守:島津義弘が主人公。
島津といえば 九州制覇、文禄・慶長の役などで
勇名を馳せていました。

義弘は
政局を読み取って 敵の作戦を察知するのも得意だったそうです。

そんな彼は
関ヶ原の戦いに 兵力不足にも関わらず 参加するんです。


関ヶ原の戦いは 豊臣秀吉の死後、
天下を狙う 徳川家康 VS 秀吉の遺志を継ぐ 石田三成 という 構図。
数万人同士の 天下分け目の戦い。

実は、
島津藩まで 大阪の状況は なかなか伝わってこなかったんですって。
そこで 義弘は 大阪に 移り住んで、
通じない鹿児島弁を捨て 外交を行い 情報収集をしていました。

家康か、三成か、どちらに つくべきか。
戦後処理で 処罰の対象になる可能性がある 中立 の立場は
とることができず。

そんな中、
島津として 石田三成側(西軍)に付かなきゃいけなくて。
でも 徳川家康(東軍)と 密約を交わしていて。

戦場には 島津方は数百人しかいない という状況。
それを知った 薩摩の侍たちが「義弘さまの命があぶない!」と
農作業を止めて 走った(奔った)!というのが
『島津奔る』 という 題名にも 現れているところです。

直線距離にして 800km。
しかも 途中途中 東軍の藩も 通らないといけません。
それでも 侍たちは 国のため お館さまのため 奔ったんです。
すごい。

合戦の結果、勝利したのは 東軍。
西軍についていた 島津軍は 戦場を離脱しなければなりません。

どうしたのか。

家康の 何万という本陣に 突っ込んでいったんです。
そして そのままUターンして 鹿児島に帰ったそうです。

島津 = 強い! というイメージは 鮮烈に残りますよね。

このお陰で(?)
島津は 西軍だったにも関わらず 戦後処理で
領地はそのまま、どころか、琉球も加えることになります。

このことが 後々 (徳川幕府を倒す) 幕末へのエネルギーに変わっていく…
そこが 歴史の面白いところ!

島津義弘の
状況判断能力、決断力、外交力、
家を守る覚悟、部下への信頼、部下の意見を聞く寛容さ。

現在の 指導者のあるべき姿が描かれている、とも
評価されている作品です。
(柴田錬三郎賞 受賞作品)

残念なことに 絶版になっていますので
インターネットを駆使して
または 古本屋さんなどに日参して
手に入れてみてください。
2013年08月21日 13:27 カテゴリ:夏の36冊
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